1~2年に1度は必ず来日を果たしてくれる律儀なスター、ベックが2005年のFujiRockFestival以来約2年振りに来日を果たした。彼がほぼ桜の開花のこの時期に来る事は有名なハナシ。

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PHOTO(4.9ZEPP Osaka):Tsuyoshi Ikegami

 最終公演の武道館の前日、我らがPGS班(ホントはミュージカルチャー&ロックンロール・ミュージアム&ギミーシェルター&トレーディング)は、A氏とT嬢の努力のおかげでラフォーレ・ミュージアムで行われたサイン会へ!5人でベック本人のまえで大騒ぎ!サインをもらうわ、ベックに写真を取られるわの幸運に恵まれたのだった。13年越し、自称日本一のベックファンであるわたくしは、本人を目の前にしてその小柄さに驚くばかりであったが・・・。

‘94年の川崎チッタ初来日ライヴ時はまだ22歳でソロ・アーチストだった彼は、ノイズの出る拡声機で叫んでいたのが印象的で、日本だけ女の子の「キャー!」という叫び声が聞こえて驚いた、とインタビューで語っていた。今回の4年振り日本ツアーは、4月6日のリキッド・ルームを皮切りに、ZEPP東京、ZEPP大阪、ZEPP名古屋、ZEPP仙台、そして最終日の日本武道館と、10日で6公演を完了させた。その合間にも、関係者だけを招いての特別ライヴや、ラフォーレ・ミュージアムでのサイン会など、とにかくファンのためなら身を削ってまで働く仕事人である。残念なことに今回は、彼のブレイクダンスは一つも見ることが出来なかった。どうやら、腰を痛めていたらしい。
デビューから早13年。当初は「僕はソロでしかできない。なぜなら、自分と一緒に演ることはかなりハードなことだから、誰もやりたがらない。」と言う「自分」にメンバーを加えていって「自分たち」になり、そして、今回、人形を参加させて自分たちの「複製」まで生み出してしまった。

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PHOTO(4.9ZEPP Osaka):Tsuyoshi Ikegami

Beck PUPPETがスクリーンに大写しされている。オープニングは「ルーザー」。登場は本人たちよりPUPPETが先。彼もPUPPETを「キーボードも弾くし、踊れるし、凄いんだ。」 「でも、悪さもするから、日本で悪い事をしちゃったらごめんね。」と紹介している。どうやら、仲良しらしい。PUPPETたちは、音楽に合わせて演奏もするし、ダンサーもいるし、メンバーと同じ扱いらしい。PUPPETが出現したのは、昨年のアメリカ・ヨーロッパツアーから。写真にもあるように、実際のステージのセットそのままを小さくしたPUPPET用ステージが真ん中にある。PUPPETステージの背面にも小さなスクリーンが備えてありビジュアルが映し出されている。その小さなステージを撮影している映像が実際のステージの背面に大きく映し出される、という設定。
 それは、こういうこと・・・。
ステージを遠くから見ている観客は、スクリーンで映し出されたPUPPETの演奏を見ることになる。実際のメンバーは小さく見えるからメインがPUPPETのように感じてしまう。演奏も何もかもメンバーと同じ動きをしている。そして、ステージ間近の観客は、メンバーの様子を観ながら、PUPPETがいかに小さいかも観れるわけだ。だんだん、どっちがメインなのかわからなくなってしまう。映画を撮影している映画を観るような、写真の中の写真を見ているような、そんな奇妙な感覚になる。途中でベック本人がPUPPETベックと一緒に歌ったりもする。演出もここまで来ると、プロを超えて職人芸だ。ハプニング・アートは彼によって引き継がれていることを実感するだろう。
ライヴの半ばではPUPPEショート・ムービーも上映。オスロ公演では、アバのダンシング・クイーンでPUPPET登場。イギリス公演では、PUPPETたちがレディオヘッドの楽屋へ潜入してメンバーのお金を盗み、そして日本公演ではゴジラならぬ、BECKZILLAが都市を破壊してメンバーが退治する・・・という夢を見たBeckPUPPETであった。

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PHOTO(4.9ZEPP Osaka):Tsuyoshi Ikegami

 大阪公演では、バナナを持ってベック登場!相当お腹がすいていたのか、ウケ狙いか、この人は全くわからない。そういえば、リキッド・ルーム公演(2003年3月新宿)のとき、ステージから「お腹すいた。誰か食べ物持ってない?」と客席に向かって物乞いをして、チョコレートをもらって納得せず、ナッツをもらってようやく、「おお、これはうまいね。」と食べていた人だから、バナナを持って食べながら登場してもおかしくはないけど。

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PHOTO(4.9ZEPP Osaka):Tsuyoshi Ikegami

 今回のツアーの内容は、もちろん全てのアルバムからの曲を抜粋。どれもバージョンを変えている。この曲ってナニ?と思うくらいの芸達者なのである。曲の構成もあの手この手で、特に最終日の武道館では、ジャスティンのベースがメインのブレイクビーツ・ミックスが入った。シュガーヒル・ギャングとか、クイーンとか、ジャンルを超えた選曲で約10分ほどラップしていた。トロピカリアの演奏ではステージ左手の2個目のドラムセットに5人が集まっての演奏。そして、ディナー・タイムも再現。2005年のFujiRockで度肝を抜かれた、あのディナー・タイムだ。ベックがアコギでブルースを歌っていると知らぬ間にテーブルが運び込まれて、気づけばグラスやフォークなどでメンバーが演奏をし始めてあのラテンチューンのクラップ・ハンズで盛り上がる、というやつ。ZEPP仙台では皆が大喜び。みんな、おととし行ったんだね、きっと。

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PHOTO:Tsuyoshi Ikegami

 ベックのカウボーイ・ハット姿はおなじみでもある。ステージで帽子は珍しいが、知る人ぞ知るFLXUSメンバーでもあった今は亡き彼の祖父、アル・ハンセンは頭がはげていて、「きっと僕も、アルみたいに禿げ上がる運命なんだ。」と語っていたベックの長髪も珍しい。
ストリートを代表するみたいな古着ファッションから、セレブっぽいスーツになったり、大好きな気ぐるみでステージを動き回るメンバーだったりしたが、今回はアメリカとヨーロッパを足し合わせたような時代もわからないスタイルで一環していた。PUPPETたちと一緒に、これが彼らの正装なのだろう。
 音の構成はステージごとに多少違っていたそうだ。リキッド・ルーム公演ではほとんどがアルバムとは全く違うバージョンで演奏、ZEPP東京は、かなりのアゲアゲ状態だったそうだ。最終の武道館が一番バランスの取れたものであっただろう。ローファイ野郎は未だ健在で、味のある演奏が際立っていた。演出も多元的ならば、音もさらに多元的だった。ストレートなロックを好む人には彼のよさは決してわからないかもしれない。サイケデリックがお好みならば、きっと彼のライヴは観る価値がある。ブットビものであることは確かなのだ。

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PHOTO(4.9ZEPP Osaka):Tsuyoshi Ikegami

 The Informationの発表後、イギリスの由緒あるチャートから、このアルバムは外されたそうだ。理由は、アルバムにステッカーを付けて、「参加型」にしたことが裏目に出て、やりすぎ、という評価のせいだったらしい。それに対して、ベック本人は、一切不満も不平もなかったらしい。楽しませるためにやったことはファンのためであり、決してメディアのためにやったわけではないので、(チャートから外されたことは)大したことじゃない、と語っていたそうだ。この大いなる反逆児は今日もファンのために仕事をし続けて、世界中を駆け抜けるんだろう。

TEXT:SATO(PGS LIVE!)

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Posted by takamoto at 2007-04-18 13:35